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大阪家庭裁判所 昭和40年(少イ)38号 判決 1965年11月30日

被告人 田中治重

主文

被告人を懲役一年六月に処する。

但し、本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は大木トキと共に肩書住居地においてサントリーバー「ゆかり」を経営していたものであるが、その当時同人と共謀の上

第一、昭和三九年五月三一日頃ボーイとして雇い入れた○島○二(昭和二三年一二月一二日生)を児童であることを知りながら同日から同年七月二八日頃までの間二九回にわたり、右ゆかり内の応接間又は付近のホテル等において山田美代二外多数の男客を相手に男女性交を模した手淫、素股その他性交類似の行為をなさしめ、

第二、同年一二月四日頃ボーイとして雇い入れた○本○信(昭和二三年五月二〇日生)を児童であることを知りながら同日頃から昭和四〇年四月三日頃までの間約五一回に亘り同区山王町一丁目五番地園南ホテル等において樋口憲行外多数の男客及び女客を相手に前記行為並びに売淫をなさしめ、

第三、同年一二月四日頃ボーイとして雇い入れた○橋○秀(昭和二三年一一月二七日生)を児童であることを知りながら同日頃から昭和四〇年四月三日までの間約三七回にわたり、右園南ホテル等において右樋口憲行外多数の男客を相手に男女性交を模した手淫、素股その他性交類似の行為をなさしめ、

第四、同年六月一三日頃ボーイとして雇い入れた篠○洋(昭和二四年四月二七日生)を児童であることを和りながら同日頃から同月二五日頃までの間約八回にわたり同区東田町三四番地いずみや旅館等において、大黒幸一外多数の男客及び女客を相手に前記行為並びに売淫をなさしめ、

第五、同年七月六日頃ボーイとして雇い入れた児童である漁○勉(昭和二四年一月一九日生)につき適切な年齢確認の方法を尽さず同日頃から同月一三日頃までの間二回にわたり、右いずみや旅館において氏名不詳の男客及び女客各一名を相手に前記各行為をなさしめ、

第六、同月九日頃ボーイとして雇い入れた児童である○田○敏(昭和二三年一月一一日生)につき適切な年齢確認の方法を尽さず同日頃から同年八月一日頃までの間約九回にわたり同区東田町三〇番地明治ホテル等において大黒幸一外一名の男客を相手に男女性交を模した手淫、素股その他性交類似行為をなさしめ

もつて、それぞれ、満一八歳に満たない児童に淫行をさせたものである。

(証拠の標目)<省略>

(法令の適用)

児童福祉法第三四条第一項第六号、同法第六〇条第一項(但し、判示第五及び第六の各事実につき同条第三項付加)(懲役刑選択)、刑法第四五条前段、同法第四七条本文、同法第一〇条(判示第二の罪に付き併合加重)、同法第二五条第一項第一号

(被告人の主張に対する判断)

被告人は被害児童篠○洋以外の判示同児童五名を雇い入れる際同人等が一八歳未満であつたことを知らなかつた旨主張するのであるが、前掲証拠に徴すれば判示被害児童○島○二、○本○信、○橋○秀の年齢が一八歳未満であることを雇い入当時又はその頃知つていたことが認められるのみならず前記六名の児童を雇い入れるにつき戸籍謄本又は同抄本の取寄するなど児童の年齢確認について調査義務を尽さなかつたことは被告人自らこれを認めるのみならず前記証拠により明らかである。従つて、使用児童の年齢確認につき過失の責あるものといわなければならないので、前記児童の年齢を知つている場合はむろんのこと、仮りにそれを知らなくても、児童福祉法第六〇条第一項の規定による処罰を免れることはできない。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 円井正夫)

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